現在日本全国には、全部で792の市が存在しています。
※令和4年4月1日現在
その全国にある全792の「市」にあるはずのもの…その全てには「市長」がおり、「市議会」があり、『市役所』が置かれている…はずですよね?
しかし全国で唯一「市役所が存在しない」市があるって…ご存じでしたか?
それがここ!青森県八戸市!ここは全国で唯一、市役所が無い市なんです!ご覧の通り、市の中枢機能が集まった建物には「八戸市庁」とデカデカと掲げられているのです!
実は、市役所を「市庁」と表記している市は、全国にいくつかあるようです。ですが、それらはあくまでも「●●市庁舎」という建物をあらわす表記でしかありません。
しかし、ここ八戸市の市庁表記は他とは全く違います。まさに筋金入りの「市庁」なんです!
…こんにちは!旅人サイファです!
全国を旅しながら、ご当地の謎や不思議を探索するのが大好きな筆者。実はこの「八戸市に市役所がない」問題、地理好きな人々の中では割りと有名なお話でした。
この度、青森県に取材旅行に行く機会があったので、実際「八戸市庁」へ行って来たのです!そして、総合受付で尋ねてみました。
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「スミマセン、つかぬことをお伺いしますが…」
「はい?なんでしょうか?」
「八戸に市役所ってあるんですか?」
「はいぃ?(怪訝な顔で)ここが…八戸市役所ですけど?」
「(え。市役所って言ってる?)でも、ここは表に八戸市庁って書いてありますよね?」
「ええ。ここは八戸市庁です。」
「と、言うことは八戸市役所は無いんですかね?」
「いわゆる市役所の役割はこの建物が担っています。ただし、八戸市では市役所とは呼ばずに市庁と称しています。」
「なるほど!つまり八戸市には市庁しかなく、市役所は存在しないんですね?」
「そういうことになりますね。電話帳にも市庁で登録してありますよ。」
「!!!ありがとうございました!」
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なんと!耳よりな新情報!電話帳にも「八戸市庁」として記載されているらしい!早速、インターネット電話帳で検索してみました。
iタウンページで、「市庁」で検索すると…なるほど!
出てくるのは9割「八戸市庁」関連施設ばかりです!
次に「八戸市庁」で検索してみると、結果は361件!
一方で「八戸市役所」で検索すると、結果はわずか43件しか無いではありませんか!
やはり、受付の方が教えて下さった通り、「八戸市庁」の代表番号や総務部、建築部、果ては教育委員会まで、全てが「八戸市庁」で記載されているのです!
一方で「八戸市役所」で検索して出てくるのは、水道工事やカギ修理の民間業者ばかり。
ちなみに、他の市で「市庁」として代表番号まで登録している自治体は、ただのひとつもありませんでした。
つまり正真正銘、「八戸市だけが唯一!市役所が存在しない市」なのです!
そもそもなぜ、八戸市は「市役所」ではなく「市庁」を名乗っているのでしょうか?
以前記事にまとめたこともありますが、八戸市は江戸時代以前から、現在の岩手県盛岡市を本家とする「南部家」の領地でした。
しかし、明治維新を経た明治4年、新政府の発令した廃藩置県の結果、悲惨な目に遭います。
南部家の領地のうち、中南部は岩手県とされたのに対し、八戸を中心とした北部だけは、本家と分断されてしまいます。その上、長年の仇敵「津軽家」と一緒にされて「青森県」に編入されてしまうのです!
実際、青森県の県庁所在地をめぐる争いでは、非常に激しい闘争が行われたと伝わります。しかし…最終的に津軽と八戸の中間である「青森市」に県庁は置かれてしまうことが決定します。
これにも八戸は猛反発!やがて八戸市が誕生した際には…
「青森県なんぞに従わん!こちらこそが本当の県庁だ!」
と言わんばかりに『八戸市庁』と名付けてしまうのです!
八戸の住民は、現在でも自分たちを「青森県人」とは思わずに「南部人」だと思っています。
その意地が…全国で唯一、市役所の存在しない市として、現在にまで受け継がれているのです!なんともはや!八戸人の意地!恐るべし!