本日放送のNHK大河ドラマ『青天を衝け』ざっくりコラムです。
明治の世が徐々に整備され平らかになるに従い、次の課題は諸外国と結んだ不平等条約の撤廃改正でした。
教科書的に言えば、治外法権や関税自主権の撤廃。アメリカ大使パークスとの会談の中で、「民意」とは何か「世論とは何か」、日本にはこれらを知る場が無いではないかと鋭く指摘されます。
これを受けて、日本政府が民間の商人たちに投げ掛け作られたのが「東京商法会議所」、現在の「東京商工会議所」です。
ここで、民間の緒企業が、私利私欲を捨て合同して意見を出す場、日本で最初の民意をまとめる場が作られるのです。渋沢栄一は、初代会頭として政府に意見を届ける役目を担います。
さて今回、ようやく明治産業界の両巨頭「三菱の岩崎弥太郎」と「渋沢栄一」が対面しました。
己が儲けることこそ商人の生き様。己の利を追及することがこの国を富ませる。
才覚のある商人が独裁的に商売を行うことで、波及的に国全体を富ませるという岩崎弥太郎の考え方。あくまでも三菱=岩崎家が富を「独占」するという信念。
一方、渋沢栄一の考え方の根本は「合本」。皆が幸せに、皆が富むように。
民間から金を集めてより一層富を産み、それを民間に還元するという栄一の考え方と、岩崎弥太郎の利を追求する考え方は決して交わるものではありませんでした。
やがて、日本の海運業界で二人は正面衝突することになります。
それぞれの信念に基づき事業を展開してきた二人が、ついに正面から角を突き合わせる。共同運輸会社と郵便汽船三菱会社の戦いである。
渋沢には岩崎三菱の専横が許し難かった。近代経営の体をなさない単一資本にして社長独裁の会社が、政府の助成を享受し日本の海運を意のままにしている。許せない。日本のために良くない。渋沢は井上馨らに働きかけ、三井を中心に共同運輸を設立した。2年半にわたる壮絶なビジネス戦争が勃発した。結局、共倒れ必至となり、両社合併して日本郵船になったのだった。
現在も日本最大の船舶数航路数を誇る日本船舶業界のフラッグシップである日本郵船株式会社は、そんな三菱系と三井+渋沢系の合併会社。
現在でも、東京丸の内に堂々たる本社ビルを屹立する「日本郵船株式会社」は、渋沢栄一と岩崎弥太郎の人生かけたせめぎあいの結果産まれた鬼子とも言える存在なのです。
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