こんにちは、旅人サイファです。
数々のトラブルに見舞われながら、無事1年間の放送を終えたNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。
これまで、主殺しの極悪人とされてきた「明智光秀」を主役に据えた意欲作でした。
実は私、このブログで『麒麟がくる』放送以前からこう述べていました。
明智光秀は日本の国の形を守った功労者なのではあるまいか…
…と!
戦国時代は下剋上の世界でした。
秩序も法律も機能していない時代、人々は自らの家族と財産を守るために自衛し、あるいは地方大名の傘下に入ってその庇護のもと生活を守っていました。
秩序がない世の中とは、法律も警察も裁判所もない世の中と言えばイメージしやすいでしょうか。
少し油断すればせっかく収穫した米を略奪され、田畑も財産も持って行かれる。殺人強盗は日常茶飯事。
民は日々の食糧もままならない暮らしを強いられていました。
村単位、郡単位、国単位でそれぞれが割拠し、本来秩序を安定させるべき存在である足利将軍ですら都を追われ逃げまわらなければならない世界。
力をつけた大名は、隣国を侵略し『自分の領土を広げること』しか考えなかった時代に現れたのが、風雲児・織田信長でした。
織田信長は、各地方の大名が好き勝手に争っていては民が安心して暮らせない…というニーズをいち早く感じ取ります。
それは、「うつけもの」と呼ばれた若き日の放蕩生活から得た感覚だったのかもしれません。
城を一歩出れば、民たちは苦しんでいる。
せっかく米を作っても野盗が来て略奪されてしまう。抵抗すれば殺されてしまう。
にも関わらず、警察も取り締まってくれないし裁判も起こせない。
こんな世の中で、民が何を望んでいるか。
それは、争いのない安寧な世の中。
信長は、『国ごとに大名が争っていても解決しない。尾張だけでなく、美濃も伊勢も近江も越前も…全てを包括した大きな国を作らねば、いつまでもこの無秩序な世界が続く。誰かがこの日の本を統一せねばならない』と考えた最初の男だったと思っています。
そしてその信念のもと、初めは足利義昭を戴きつつ、天下統一へ邁進します。
しかし…信長のやり方は苛烈過ぎました。
敵対する勢力は根絶やしにする。自分の意に沿わぬ部下は追放する。
ついには足利将軍すら放逐。
さらに、古くからの宗教権威である比叡山や一向宗本願寺さえも殲滅してしまいます。
そしてこのまま信長のやり方が続いた場合…もしかしたら天皇家すら滅ぼしかねない!
多くの人が抱いた懸念。
光秀はそれを敏感に感じ取っていたのでしょう。
意に沿わぬものは全て殲滅する…という信長のやり方では、世に恨みが蔓延します。
その恨みを抑えるために、また過酷な弾圧をする…。恐怖で押さえつける恨みの連鎖。
そんな世の中にする訳にはいかぬ。それは我々が夢見た『麒麟の世の中』ではない!
本能寺の変は、決して光秀個人の感情でも野望でもない。
時代の求めに応じた義挙なのかも…しれません。
信長を止め、彼の握っていた『麒麟のバトン』を取り上げたのが本能寺の変。
その『麒麟のバトン』は、秀吉、そして家康へリレーされて、ようやく争いのない平らかな世の中になるのです。
この国の形を守るために、涙を飲んで信長を止めた光秀。
そんな苦悩と葛藤を描いた『麒麟がくる』。
明智光秀役の長谷川博己は見事な演技で新しい光秀像を創り出してくれました。
そして…
脇を固める役者陣の演技も脚本も素晴らしかった!
戦国時代ものにも関わらず、ヒーロー群像劇にしなかった今作。
時代考証に疑問を感じる点もありましたが、エンターテイメント性の高い、近年まれにみる傑作かと、私は思います。
麒麟がくる解説!